夢も現実もない。

何も見えないのならいっそ、明かりを消すのもいい。今が浮かび上がる。僕だけがいる。

やさしい静けさに誘われて、押し込められていた期待達がひらひら踊り出した。どうしようもなく美しい欲望の妖精。君はいいね。とても素敵。

蓋をすれば風は止んで、紙粘土の笑顔の中に、また飛び込んでいける。僕は鯉。どこでだって泳ぎ回れる。苦しくたって生きていける。

でも大洪水の日が来たら、新しい場所へ行こう。海がいい。誰にも止められないようなものすごい勢いに流されて行こう。

その日はいつか。僕は知らない。でもいつかやってくる。日が沈んで、みんな滅んでいく時間。藍色の浜辺で疲れているそいつに月の光と毛布をかけて、お話は次の誰かへ。竜になれなかったって、それでも別にいいのさ。

お前は飛び跳ね過ぎるから、見なくていいものまで見てしまう。見てみたかったんだよな。わかるよ。悔しいね。悲しいね。

きっと許せるから。だってみんな素敵じゃないか。今のお前の目で見ない方がいい。ほら、目を閉じよう。また花を見に行きたくなったら開ければいい。大丈夫だよ。